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前回、省エネ住宅を考える際の「断熱の種類」について書きました。prev
そもそも、どうすれば、理想の住宅になるのか?の続きとして、この断熱材についてもう少し掘り下げてお話します。
省エネ住宅に使われている断熱材・・
まずは、前回の復習。断熱材を「無機繊維系・木質繊維系・発砲プラスチック系」に分けました。
材料(原料)の違いで、いろいろな断熱材があります。ってお話です。覚えてますか?
今回は、その中で、よく使われている、無機繊維系断熱材のことをお話しましょう。
1つは、グラスウール。ガラスが原料であることは前回までにお話し済みです。原料のガラスを高温で溶かして、遠心力などで細かい繊維状にして作られる断熱材で、製造過程はさすがに見たことは無いのですが、綿菓子つくる工程に似てるらしいですよ。実際の断熱材が施工されているところは、アイキャッチ画像のような感じです。
袋の中に、繊維状になったガラスが入っているわけです。袋をカットして、中身に触れると、チクチクします。なので、作業中に現場へ行ったりすると「触るなよ」とよく言われてました。
ちなみに、下記の写真は、現場へ行く前の積み置きされている断熱材たち。いくつかのメーカー、種類があってそれによっても性能が異なります。
では、もう一つの無機繊維系の断熱材、ロックウール。原料が高炉スラグなどを繊維状にしたものであることはお話し済みですが、見た目や施工している状況(※あくまでも住宅の天井や壁に施工している断熱材の話)などは、グラスウールと変わりません。遠心力で繊維状にするという作り方も同じです。
ということで、まとめて、その特質をお話すると、
【無機繊維系断熱材の特質】
- 断熱性能は、繊維の密度によって異る。
- 耐久性があり、経年による劣化が少ない素材。
- 燃えにくく熱に強い。
まずは、密度のお話から。密度は、高ければ高いほど、断熱性能が良くなります。おそらく、省エネ住宅を建てたいと思う人が一番気にするところですよね。2(耐久性)3(難燃性・耐火性)は、そうなんだ。ぐらいではないかと・・。違っていたらゴメンナサイ!
ところで、密度が高いものほど、断熱性能も高い。とはどういうことなのでしょうか?
これまで、断熱のお話と合わせて、熱伝導率や空気層のお話をしてきました。覚えていますか?空気をどれだけ閉じ込めているかが断熱効果を発揮するのに重要とお伝えしました。
そこで、少し疑問に思うのは、密度が高いと断熱性能が高いということ。ガラス繊維、鉱物繊維の密度が高いということは、その分空気は少ない?それなのに、断熱性能は高い。不思議じゃありませんか?
その理由は、熱の移動。繊維の密度を高くすることによって、間にできる隙間(空気を含む部屋)が小さくなり、熱がより移動しにくくなる。ということ。空気を含むことと、共に、その空気間で熱が移動しにくい。ということが、断熱性能の効果をあげることにつながるんですって。へぇ~って感じですよね。
というわけで、皆さんは、断熱材を選ぶときには、この密度が高いものであれば、より高性能なんだ。という感じで、まずは理解しましょう。
では、どのくらいの密度のものを選ぶのか?
断熱材の密度は、次にように表します。
10K, 16K, 24K, 32K, 38K,・・ ( K=kg/m3 )
数字が大きいほど、密度が高く、断熱性能が高いということになります。メーカーによって用意されているものが多少違いますので、詳細は、熱伝導率という数値で見ると良いです。
分かりにくい部分として1つお伝えしておくと、「高性能グラスウール」と表記されていることがあり。通常のグラスウールに比べると、高性能グラスウールは、1本あたりの繊維が細く、その分、空気を多く含み、性能が高くなっています。高性能グラスウール16K(グラスウール24K相当)などと書かれていることを目にするのは、このためです。
なので、密度の数字だけでなく、熱伝導率という数字を確認するようにしましょう。
熱伝導率については、省エネ基準に記載されている表によると、下記のように表現されています。
住宅用グラスウール断熱材 16K相当 0.045W/m²K
住宅用グラスウール断熱材 24K相当 0.038W/m²K
高性能グラスウール断熱材 16K相当 0.038W/m²K
この 0.038W/m²K の部分が熱伝導率を表す数字。つまり、数字が小さいほど、熱が伝わりにくく、断熱性能が高い、断熱材ということになります。
省エネ住宅と言われる住宅では、24K以上の断熱材が使われることが多くなりました。(あくまでも個人的調べで書いております。ご容赦を。)数年前までは、16Kぐらいだったように記憶しているけど。。。ということで、年々、高断熱化は進んでいるように感じます。
省エネ住宅であることを示すための基準である、断熱性能等級や、計算の仕方についても、この先お話したくなりますが、これは別の機会にしましょう。なお、熱伝導率については、窓のお話のところで、少し書いていますので、良かったらそちらも、読んで下さいね。
それでは、今回の主題に戻そう・・ということで、「グラスウールの特質」で、デメリットとして上げられることを次にお伝えします。
4.水に弱い
これは、グラスウールの話で、頻繁に出てくることですが、水や湿気に弱く、断熱材の中に水分が入り込んでしまうと、断熱材自体が重くなり、壁の下の方へ落ちて、断熱の効果が無くなるだけでなく、カビの原因になったり、木材を腐らせたりし、家そのものに大きなダメージを与えてしまいます。
ロックウールの場合、撥水性があるから・・グラスウールよりも優れているという記述もありますが、グラスウールもロックウールも、繊維そのものが水を吸収するわけではないと思うので、中までしっかり水を含んでしまったら、結果的には同じではないかなと思います。グラスウールの中にも撥水性を持たせている物もあるようですし、そこまでの優位性ないのではないでしょうか。
原料の特質の違いでいうと、耐火温度。ロックウールの方がグラスウールよりも、より高い温度まで耐えられるということや、防音効果。どちらも防音性能はありますが、防音できる音域に違いがあるということ。
このような「断熱性能以外の特質」まで踏まえて、選択するかどうかになりそうです。
住宅現場で用いられている断熱材は、グラスウールの方が多いと思います。どちらを採用するかといえば、やはり、価格が安いグラスウールを選択するという人が多いのだと思います。
いずれにしても、水に弱い無機繊維系断熱材を使用するときには、施工不良がないことが重要。
まだまだ、断熱性能の重要性が、今のように言われていないころは、湿気や水分を断熱材が含み、建物にダメージを与えたケースがたくさんあったことから、グラスウールやロックウールについて、かなり否定的にとらえている人が沢山います。ただ、多くは、ずさんな施工から発生したこともあり、ずいぶんとここ数年で改善されてきていると思います。
そんなこと言われても、きちんと施工してくれる業者をどう見分けるのか?? ここで書けることは、信じるしかない、という、なんとも頼りないアドバイスにはなりますが、建築会社と良い関係をつくること、自分の目で多くを見ることが重要ですし、建築会社の選び方について、相談も受けておりますので、気になる方はご連絡くださいね。相談予約
まだまだ続く省エネのお話。⇒ 木質繊維系について(続き)をUPしました。